WG2 代表
鎌田 真由美
京都大学大学院医学研究科 人間健康科学系専攻 ビッグデータ医科学分野
がんを対象としたゲノム医療では、 個々人のゲノム情報に基づく奏効可能性薬剤の提示や予後予測を行うことを目的としている。そこで、本プロジェクトでは、公開されているがんのゲノムデータベース(TCGA)を用いて、 体細胞変異プロファイルに基づく患者層別化(分類)および予後予測を行うAIを開発する。さらに、がん種横断的なゲノムデータの解析により、組織分類(例えば肺がん等)に代わる遺伝子に基づくがん分類を目指す。
診断・検体検査においては、生体試料の前処理が共通技術として重要である。しかし、現在のところ前処理デバイスの設計プロセスには数々の技術的課題がある。本プロジェクトではAI技術を活用し、生体試料の複雑さに対応したデバイス設計の最適化を図る。本プロジェクトは参画企業の合意により、競争領域での研究開発活動に移行し、LINCから卒業した。
医薬品開発期間の短縮化は喫緊の課題である。前臨床試験では安全性評価を担うが、病理検査は創薬シーズのスクリーニングで多大な時間と労力を要するため開発の律速になる場合がある。本PJでは、深層学習を用いた病理所見の学習により、病理標本の毒性(正常/異常)領域の判別が可能なモデルを目指す。標本の判別(低リスク/高リスク)により前臨床の効率化が期待でき、かつ病変の詳細解析や機序検討など高次の精査にも資することが可能となる。
電子カルテデータを活用し、機械学習を用いた層別化による特徴探索から、患者の診断と治療の精緻化、創薬の可能性を検討する。本PJでは、2型糖尿病及び腎臓疾患の患者を対象に、診断初期の各種パラメータと治療方針、使用薬剤等の情報から、患者予後(合併症発症、増悪の有無など)予測モデルを構築する。また、診断初期(期間は要検討)の各種パラメータ、治療方針とその結果から、治療別反応性予測モデルの構築を目指す。
「何の分野で何の遺伝子が注目されているか?」という知見は新たな標的や適応症を探索する創薬活動において重要な情報である。そこで文献を含めた様々な英文テキスト(特許、研究助成、学会演題、Web文章)に記述される遺伝子名を遺伝子データベース上のIDと結び付けて認識するツールを開発する。最新AI技術による精度向上のほか、non-coding RNA対応、低い計算コスト、辞書・AIモデルの定期更新など、ツールのユーザビリティ向上も大きな目標とする。